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ヘルツォーク&ド・ムロンによるヴィトラハウス

ここに掲載されているのはスイス建築家、ヘルツォーク&ド・ムロンによるドイツ、ヴァイル・アム・ラインのヴィトラキャンパスにオープンしたヴィトラハウスの写真。

チャーコール色のスタッコ仕上げの5つの尖り屋根を持つボリュームが積み重なったような5階建てのこの建物は、家具ブランドのホームコレクションを展示するために設計された。


各切り妻部分の端面はガラス張りで5mほどキャンティレバーで外側に張り出している。それはいかにも家が山積みになったように見える。


内部では、交差する白く塗られた空間が螺旋階段でつながっている。


ヴィトラハウスはヴィトラキャンパスに建つフランク・ゲーリーと安藤忠雄による既存の建物に仲間入りした。


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写真:イワン・バーン

ヴィトラからのテキストは以下の通り。



ヘルツォーク&ド・ムロン:ヴィトラハウス、ヴァイル・アム・ライン

2004年1月、ヴィトラは自社のホームコレクションを発表。コレクションには古典的なデザイン同様に再訂版やコンテンポラリーデザイナーによる製品が含まれています。ヴィトラはもともとオフィス家具とビジネス顧客を中心に事業を行ってきましたが、新しいターゲット層として、デザインに興味のある個人顧客のためにホーム(住宅用)コレクションを立ち上げました。


ヴァイル・アム・ラインのヴィトラキャンパスにはホームコレクションを展示する十分なスペースがなかったので、当社は2006年にバーゼルに拠点を置くヘルツォーク&ド・ムロンにヴィトラハウスの設計を依頼しました。広大な敷地と衝撃的な外観のおかげで、すでに突出した他のヴィトラの建築群を強調するだけでなく、ヴィトラキャンパスを指標する重要な役割を担っています。フェンスで囲われた製造工場との境界前に広がる敷地の北側に建ち、ヴィトラハウスは同じエリアに建つフランク・ゲーリーによるヴィトラデザインミュージアム(1989)と安藤忠雄によるコンフェレンスパビリオン(1993)の2棟に加わった。たっぷりとした区画のおかげで、ヴィトラデザインミュージアムと隣接する門番小屋から程よい距離をおき、この地方の典型的ランドスケープである建物正面の果樹園用草地の拡大に十分なスペースを残して新しい建物は建っています。

ヴィトラハウスのコンセプトはヘルツォーク&ド・ムロンの全作品に繰り返し現れる2つのテーマを組み合わせることでした。それは家の原型と積み重なったボリュームというテーマです。ヴァイル・アム・ラインでは、5層の建物に住宅のための家具や備品を展示するのが当初の目的だったので、原型の家というアイデアに戻るのは非常に適切でした。内部空間のプロポーションと大きさに基づいて - 建築家は「家庭的なスケール」と表現してますが - ショールームは親しみのある住宅のしつらえを思い起こさせます。展示スペースの一般的な特色を持つ個々の「家々」は、抽象的なエレメントとして発想されました。ただいくつかの例外として、切り妻の端面がガラス張りで、構造ボリュームが押出プレスによって形成されたように見えます。全部で5層に積み上げられ、ある場所においては15mにも及ぶ息をのむほどのキャンティレバーで支えられており、床スラブが下層の切り妻を交差する12の家々は3次元的な集合体を形成しています。この山積みされた家々は、一見したところ、ほとんどカオスに見えます。

チャコール色の漆喰塗りの表層は構造物を一体化し、「接地し」、周辺のランドスケープとつながっています。垂直に重ねられた小さな街のように、ヴィトラハウスはキャンパスの玄関として機能しています。5つの建物はコンフェレンスエリア、ヴィトラデザインミュージアムの椅子コレクション用展示スペース、 ヴィトラデザインミュージアムショップからなるモール、レセプションとクロークのあるロビー、夏期に利用される屋外テラスのあるカフェに分類されており、それに囲まれた開放的な中心エリアは木製の厚板床で明確になっています。エレベーターで来訪客は旋回経路の始まる4階に上がります。エレベーターを降りると、部屋の終わりの北側ガラス窓はからはトューリンガーヒルの壮観な眺めが一望できます。屋外テラスを設けるためガラス正面が凹んでいる反対側の部屋の終わりは、製薬会社の工業施設が立ち並ぶバーセルのパノラマが広がっています。ヴィトラハウスの経路をたどっていると、家の方向性がほとんど恣意的でなく、周囲のランドスケープの眺めによって判断できるでしょう。


内部空間の複雑性は単に個々の家の角張った交差から起こるだけでなく、第2の幾何学的なコンセプトの統合から生まれます。階段全体が開放的で曲がりくねった有機的なボリュームに取り込まれ、まるで寄生虫のように様々な建物のレベルを通り抜けて侵食したように見えます。階段に立つと、時にはそれぞれの家の間にある魅力的な視覚関係が現れたり、眺めが遮られたりするのです。家具の存在を際立たせるために内壁は白く塗られています。


ヴィトラハウスは最長57m、最大幅54m、最高21.3mのスケールをもっており、ヴィトラキャンパスの他の建物を超えています。慎重に意図したことは、普通の生産工場のように平べったい建物を建てるのではなく、周辺のランドスケープと工場施設など多様な意味をもつ全体的な概況と、ホームコレクションとしての概要を受け入れるような建築面積の小さめな垂直方向への建物を建てることでした。ちょうど内部と外部空間が貫き合うように、外から認識できる直交した多角形と、内部における一連の空間的な意外性を生み出す有機体という形態の2タイプ性が貫き合っています。この建物は想像力を駆り立てる迷路のような性格をもつ「秘密の世界」(ヘルツォーク&ド・ムロン曰く)なのです。5層の建物の経路を通り抜け、来訪客はヴィトラホームの世界を横断しながら最終的にはまた出発地点に戻ります。


ヴィトラハウスは日中と夜間の異なる眺めを提供します。夜になると、視野は反転します。日中はヴィトラハウスから風景を見る形で、暗くなってくると建物自体が消散するかのように見えなくなり、照らし出された建物内部が際立ってきます。室内は開放され、ガラス張りの切り妻端面は展示ケースと変容し、ヴィトラキャンパスを超え、周囲の田園風景を照らし出します。



翻訳者:壽藤美智子

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