オブジェには漆という、日本の伝統的な樹液から作られた塗料を、60層にも塗り重ねてある。
このシリーズには、漆塗りの発砲スチロールから作ったサイドテーブルとスツール、そしてカトラリー(食卓用ナイフ、フォーク類)一式が含まれる。
Dezeenのアルド・バッカーに関する他の記事
バッカー氏からのメッセージは以下の通り。
漆シリーズ
サイドテーブル
我々が生きる現代社会を特徴づけるのは、時間がないという人々に共通の思い込みです。我々の文化では成功願望へのプレッシャーがかえって、人々を奇妙な形のリラクゼーションや自由の模索に駆り立てています。
日々、大量の刺激を受け、またそれに慣れることで、誤ったタイプの依存症が生まれます。刺激が通常のストレス要因を取り除いて、ある種のリラクゼーションとして作用するという考え方です。
私のデザインはまったくその逆を奨励しようという試みです。求められるのは、遅さ、認識、時間、配慮。私の作品に注ぎ込まれた多大な配慮と注意は、非常に長い時間をかけることによって初めて鑑賞者の目に見えてくるのです。形の完成度や素材にこだわることで、最終的には新しい用途や経験につながっていきます。理想的な状況では、すべてのオブジェクトが独自の性格を呈し、独自の正当性を確立しています。私のデザインは流行りに基づいてはいません。それぞれが独自性をもった作品であり、一見して理解できないかもしれませんが、ゆっくり時間をかければ、その表面を覆っているものが一枚一枚はがされ、奥にあるものが発見されるよう意図されているのです。
構想
上記のような考えが指し示す結論として「漆シリーズ」は何よりもサステナビリティを目指しているということが言えます。私が考えるさすてナブルなものとは、人の行動に影響を与えるものです。作品を通じて私は、消費社会のなかで物質志向がますます高まることへの、穏やかで静かな抗議を表現しています。時代を超えて永らえるもの、また「永遠の生命」を指し示すものを作ろうとする努力で、そういった社会の傾向に対抗するのです。消費ではなく保存をする、ということです。
形と中身
漆のサイドテーブルに使われた素材の組み合わせは、私にとっては珍しくとても刺激的なものでした。この組み合わせが、伝統と工業的手法との、そして究極の職人芸とコンピュータ主導による精密な製造過程との、架け橋となるのです。出来上がった作品に見られる徹底的なコントロールは、数年にわたる実践の成果であると同時に、人間の行動を複雑なソフトウェアに翻訳した結果でもあります。つまりこのプロジェクトで私が実現したのは、自然と人口の(不)可能な組み合わせなのです。たとえばサイドテーブルの中心部、【ボディ】となっている部分は、硬いポリウレタンフォームから出来ています。新たな構造(フレーム)を作ることなく、望む形を作り出せました。この素材はモデリングには最適で、完成品の重量(非常に軽量なものも含めて)に関しても自由自在にコントロールできます。
成果
オブジェの【永遠性】は、日本の漆を塗ることで実現しました。このニスは漆の木から抽出されたまったくの自然のもので、ほぼ直接に塗ることができます。漆が60層にも塗られますが、大体その30層が上塗り用、残り30層でより光沢を出します。時間が経つことで、自然由来の高分子のニスはより堅くなっていきます。堅いポリウレタンフォームと組み合わせることで素晴らしい効果があります。中心部分は「生きていない」素材ですから、ニス自体に変化が現れることは決してありえません。漆を塗った強い「陳列ケース」が、その形の「壊れやすい完璧性」を保護し、合成素材に永遠性を与えているのです。漆を塗った物の中には9000年を経て未だ尚、素晴らしい保存状態のものもあります。
漆の価値や美しさは、ある特定の世代や時代だけに限られるのではないことを、私は強く実感しています。事実、漆の古い歴史や伝統が最近の素材、デザイン、文化の発展にいかに新しい息吹を与えたかを私は見てきました。私にとって漆は、伝統の本質の象徴です。何世紀もの間、使われよさを認められてきた工芸品、技術、素材などを理解し、その良さを評価し広めることが、新しい見識を生み、次のステップへと我々を導いてくれるのです。
私のデザインとその根底をなすものについて
意識、時間、注意が、漆を使う際に欠かせません。非常に細部にわたる処理を必要とし、オブジェの形、影、テクスチャー、色を際立たせます。曰く言いがたい、この世のものとは思えない仕上がりを得られます。表面には何の跡も見えない、非常に深みのある、ほとんど非現実的なほどの素晴らしい仕上がりです。この美しい輝きは見る者に、人はやがては死ぬという事実を一瞬忘れさせてくれます。
この漆シリーズは漆アーティストの西出毬子氏とのコラボによって生まれました。我々は、漆工芸を国際的な舞台に登場させるべく、共に活動しています。
サイドテーブルは7品が限定版で販売されます。
投稿者/ローズ・エサリントン
翻訳者/ハートフル・ジャパン 武田浩美
Dezeen.com オリジナル(英語)はこちら。


コメントする