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トーマ・ロンメのオープンストラクチャーズ


ベルギーのハッセルトにあるギャラリーZ33で、ブリュッセルのデザイナートーマ・ロンメが考案した、家具から家まで消費者が何でも組み立てられる、モデュラー式構造システムが展示中だ。


ロンメ氏はこのシステムを、標準部品をモデュラー・グリッド(格子版)で組み立てて遊ぶ子供の玩具Meccanoに準えている。「ウィキペディアが、皆で記事を加えて作っていく共同の辞書であるように、これは皆で部品や断片を加えていく共同のMeccanoだ」と同氏は述べている。


展示では、ロンメ氏の友人がグリッドを使って実演しながら組み立てた椅子、台所、自転車などが陳列されている。


詳細はプロジェクトのウェブサイトを参照。


デザイナーからの更なる情報は以下のとおり。




オープンストラクチャーズ
トーマ・ロンメ


ソフトウェアをデザインするようにハードウェアをデザインできるでしょうか?

持続可能性という問題について討論するとき、我々は会話の中で自分たちが極端に走ってしまっていることに気づきます。主要資源の消費が終焉することやエネルギー危機について話している一方で、ゴミ問題についても未だ解決できずに闘い続けています。消費パターンだけではなく、モノの製造、寿命、そして解体の過程までをも、再考する時期に来ているのです。

トーマ・ロンメがオープンストラクチャーズのプロジェクトに取り掛かったとき、彼は商品のライフサイクル分析からまず始めました。

商品のライフサイクルとは、モノの寿命を意味します。それは、製品の製造に関わる原料から、製造過程に必要とされるエネルギー、輸送、販売と流通、そして最終的な目的地である消費者に至るまでが関わっています。一旦商品が消費者の手に届くと、使い古されたり、傷んだり壊れたり、あるいは流行遅れになってその寿命が終るまで、それは商品としての利用価値を保ちます。


商品が捨てられるとき、廃棄物を小さなパーツに分解するために多くのエネルギーが費やされます。しばしば有害な副産物、エネルギーや資源素材が、解体過程で使われます。我々西洋の消費を基本とした社会では、ほとんどの商品製造が、未だにこのゆりかごから墓場までの直線状プロセスをただ走り抜けている状況です。

商品の寿命に対する関心が一層高まる中で、リサイクル、リユーズ、蚤の市やEベイといったオンラインの利用を通じ、製造による負の影響を最小限にすることを目的とした、代替的な取り組みが行われています。ISO基準の環境が設定されることで、商品や部品が国際的に互換性を持ち、有用性が最大化されます。さらに、分解可能な、いわばゆりかごからゆりかごへ戻ってくる素材を使えば、さらに一歩進んだ、資源の円サイクルを作り出すことが出来るのです。


写真上/ルーカス・マーセンのスクリプト・チェア


補完的なモデルを始めるために、トーマ・ロンメは「開かれたモデュール性」に関するリサーチ・プロジェクトを設立しました。OS(オープンストラクチャーズ)プロジェクトは、ひとつの幾何学的なグリッドを共有することで、誰もがデザインできるモデュラー構造モデルの可能性を探求するものです。その意図は、誰もが貢献できる一種の共同Meccanoを作り出すことにあります。

モデュール性は新しいものではありません。自然そのものが複雑なシステムの中でそれを証明し、存続してきたのがモデュール・デザインです。およそ5億年以上前、単細胞生物は、進化を促進するための優れた特質をもつ多細胞へと進歩することができました。

人間とは、一人当たり数兆ものモデュール(細胞)を持つ、頭からつま先までのモデュール式の組み立て品です。私たちはモデュール性の恩恵を日々実感しています。モデュラー・セル構造は標準のインターフェースを使って、収縮したり成長したりします。単一の存在に新しいモデュール(細胞)を加え、それが既存の細胞と互いに影響し合います。環境に迅速に適応する能力を持ち、細胞を加えたり、取り去ったり、変えたりすることで、わずかなデザインの変化が即座に試されては、採用されたり却下されていくのです。

さらに付け加えていえるのは、耐故障性の恩恵を享受しているということです。余分な細胞があるため、個々の細胞が機能を果たさなくても、全体のシステムは悪化しません。他の細胞はそのまま生き延びて、修復がなされます。(信頼性の進化論:Neil Rasmussenと Suzanne Niles「モデュラー・システム」)


写真上/アンフォールドとJeroen Maesによるコーヒー・グラインダー


モデュール性は人工構造では周知の現象です。無駄のない効率性と構造面でのフレキシビリティを強化することを目指し、建築家とデザイナーはこれまでに数え切れないほどモデュラー構造の提案を次から次へと作ってきました。それにも関わらず今日、われわれの周りには、閉鎖された互換性のないモデュラーシステムが溢れていることに気づきます。これらは時として、非人間劇な均一の構造を生み出し、廃棄破壊した後はほとんど使い道のない断片の山になってしまいます。

もしこのモデュール性の概念を向上したいのであれば、システムによって標準が異なるという階層的なデザイン・プロセスから、よりオープンな標準へと切り替える必要があります。互換性を促進し、フレキシビリティを強化するために、現在の様々な寸法の枠組みを同期化させ、唯一普遍的な標準を定義する必要があるのです。

デジタル製作の領域では、我々は既にそういったオープン・アーキテクチャーの出現を目の当たりにしています。こうしたデジタル構造物はもはや一人の個人によって発明されたりデザインされるものではなく、ピアーグループ(仲間集団)の頭脳や貢献を通して形作られていくものなのです。ウィキペディアのようなグローバル規模でのコラボは困難ながらやりがいがあって、優れた一個人の達成を遥かに凌駕するものがあります。個人でやるプロジェクトの限界を痛感し、こうしたより大きなコラボのプロセスに参加するしか選択の余地はありません。

我々は、3次元の世界に対応するオープンソース・コード、いってみれば"物質板 html"のようなものを、この構築環境に作り出す必要があります。現在ソフトウェアを作っているような方法でハードウェアをも組み立てられるようにするのです。


写真上/ブラッセルズ・コーポレーションのオープン・アーキテクチャー・ケーススタディ1

普遍的な寸法の指針を取り入れることで、古いコンポーネントは新しいフレームワークに注入されます。混在した構造がエンドレスに作られることで、閉じたループのシステムが出来上がっていきます。その結果、シンプルなキャビネットから何階もの建物に至るまで、真に拡大や縮小が可能でフレキシブルな多様性を持った「開かれた」構造ができあがるのです。

オープンストラクチャーズ(OS)プロジェクトとは、皆が皆のためにデザインできるシステムの始まりです。遠い場所にいる職人はもちろんのこと、巨大な多国籍企業にも参加を呼びかけて、それぞれが自分たちの得意技や素材、テクニックを駆使し、同じ寸法基準の中でコンポーネントをデザインしていくのです。結果、硬直して変化できないブロックではなくてダイナミックなパッチワークともいうべき、よりフレキシブルで拡張性のある構築環境が出来上がるのです。

古い部品は新しいものにとって変わられます。古いものは売ったり、再利用できます。再生利用できない場合は部品が解体されて1つの破片となりますが、寸法規定に従っているのでこれが新しい部品の素材となります。無限に復元することを想定し、部品が破損したり損失しないで解体できるような接合部分、構築技術、製造ラインを設計します。


写真上/オープン・アーキテクチャー・ケーススタディ1(ブリュッセル・コーポレーション)

デザインはすべて、オープンストラクチャーズのウェブサイト上で無料アクセスできる特注のデザイン・グリッドを使用します。定規としてアナログで利用することも、あるいは3Dのデザインソフトウェアに統合するために3Dファイルとしてデジタルで利用することもできます。このオープン・グリッドは、全OSシステムにおけるブレインとなっています。共通の測定基準ツールで、参加するデザイナーすべてが共有するものです。このツールにより、デザイナーたちは個々に、互換性のある部品、コンポーネント、構造をデザインすることができるのです。


写真上/ブリュッセル・コーポレーションによるConstruction Knot


展示は様々な規模のOSプロジェクトからなります。最も小さなOS「オープン・パーツ」から始まりますが、これはセルに相当するエレメンツです。この「オープン・パーツ」が組み立てられ、機能を持つ自立した構成要素(オープンストラクチャーズ・システムにおける部品や器官に相当)となります。続いて、様々な部品が骨組みの中で組み立てられ、接続されていき構造を作ります。構造は更に発展の余地を持ち、最終的には他の構造と組み合わせられて上部構造として機能していきます。

z33の展示では異なる規模の筋を追い、さらにこのシステムの最初の「ベータテスト」として、共同のインスタレーションにハイライトがあてられています。ソフトウェアが発売前にレビューされるように、モデルの実用性も完全に機能的なキッチンとして組み立てることで実験されるのです。異なる機能を持つ構成要素が一緒になって合理的なプロセスを実証しながら、異なる性質、素材、発想、動機が組み合わさって鮮やかなパッチワークを描き出します。トーマ・ロンメは、以下のデザイナー、職人、熱烈な独学者に、プロジェクトでコラボし同じグリッド内でデザインするように、参加を呼びかけています。

Laurens Bekemans、Biogas-E vzw、Nicolas Coeckelberghs、Kar Yan Cheung、Brussels Cooperation、Alistaire Dewit、Lise Fore、Christiane Hoegner、Bob Jacobs、Fabio Lorefice、Lucas Maassen、Jeroen Maes、Samyrah Moumouth、Karl Philips、Thermopolnv、Unfold、Jo Van Bostraeten


写真上/トーマ・ロンメと Jo Van Bostraetenによる車輪ブロック


この展示の準備段階において、トーマ・ロンメはブリュッセルのKHLimburg と Hogeschool Sint Lukas と恊働を行いました。数回のワークショップを通じて学生たちにテーマが伝えられ、最初の実験が行われました。Sint Lukas Brusselsとデザイン・アカデミー・アイントホーフェンとのコラボを通じて行われるこのプロセスは、来年まで続きます。

OSのウェブサイトは、OSグリッド内で創造される全てのパーツ、部品、器官のデジタル市場です。コンポーネントのデザインは全て、エンドユーザーたちが互いに話し合い、レビューし、格付けし、またコピー/ペーストできるようダウンロードはもちろんアップロードできることから、地球規模の部品データベースとしての役割を果たし、互いの交換が促進されます。コンポーネントが交換できるため、必要に応じて親構造の適応、拡大、あるいは収縮が可能となり、同時に時間を経ることで部品の段階的な入れ替えを通じて絶え間ない改善が奨励されていくのです。

オンライン・フォーラム、無料の3Dソフト(SketchUp)と参加型生産技術(レーザーカッティングや3D印刷というような)を通じて、顧客はデザイン・プロセスに参加します。

自然のブループリントからヒントをもらい、ミクロからマクロへと、閉じたループと無限のサイクルの中で浮かんでいる、オーガニックでモデュラーなパズルからなる物体を目指して、私たちの構造環境を形づくってはどうでしょうか。既存のロジスティックと建築の標準を、無限の多様性と組み合わせを与えてくれる唯一普遍の標準に、同期化させてはどうでしょう。私たちがもしお互いを理解したければ、同じ語彙と文法を使う必要がありますし、もしファイルを交換したければ同じフォーマットで作業をする必要があります。一緒に自分たちの環境を創りたいのであれば、同じ煉瓦を使って建てる必要があります。


写真上/Jo Van BostraetenのMod-Bike


プロジェクトからプロセスへと移行するとき、個々のデザイン・オブジェクトはそれぞれプロトタイプ、最新版、新しいバージョンとなります。失敗は新たなチャンスとなり、批判はアイディアを更に発展しより良い物にするためのフィードバックや視点となります。もし私たちが自分たちの社会を「完成」したものというより、まだ「途上」と見るのであれば、私たちには前進の余地があるのです。

トーマ・ロンメ(*1979)は、デザイン・アカデミー・アイントホーフェン、レザトリエ・パリ、トロントのインスティテュート・ウィザウト・バンダリーズ(国境なきインスティテュート)で学んだ後、ヨーロッパや海外でいくつかの異なるシンクタンクに参加しました。教鞭を取る一方で、a.o. サムソン、シーメンス・モービル、ダイナミック・シティ・ファンデーション&デザイン21C.とのプロジェクトに恊働するよう要請を受けました。2007年には、商品デザインの物理的、デジタル、かつ社会的なコンテクストに重点を置く実用主義かつ空想主義のデザイン・スタジオ「イントラストラクチャーズ(Intrastructures)」を設立しました。




投稿者/ローズ・エサリントン
翻訳者/ハートフル・ジャパン 武田浩美


Dezeen.com オリジナル(英語)はこちら

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