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イースタン設計事務所が京都にデザイン
スリットコート

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日本の建築家イースタン設計事務所は、京都市墨染町に5階の共同住宅を完成させた。


アパートの各部屋は中庭を囲むように配置され、高さ15メートルの湾曲したコンクリートが11枚の窓枠を形作る。




スリットコート(細い窓)と呼ばれるこの建物は、狭い通りに囲まれた場所に位置しながらも、中庭から各部屋に自然光が多く入るように設計された。



居住者は、桜の木を模したコンクリート製のトンネルをくぐり中庭に入る。



写真/鳥村 鋼一



以下に建築家からの情報が届いている。




スリットコート - 中庭の隠れた魅力

この建築の真髄は中庭にあり。


この建物は京都市伏見区墨染町にあります。ここは東福寺の南側に位置し、長く輝かしい歴史を持つ小さな町です。南向きのこの建物は、ゆるやかな坂の上に建てられています。



5階建の共同住宅で、1階の手前と奥には店舗が入ります。2階から4階までの各階には4部屋、5階には2部屋が入ります。



日本の家の敷地は一般的に狭く、狭い敷地が狭い通りに面しています。長い歴史を持つ町でさえも、狭い通りから大通りへ車が通り抜けるようになり、かつて人々が生活の喜びを共有していた町の姿はもはやどこにもありません。それゆえ我々は建築に際して、居住空間とは生活する上で大切な物を守る場所であるというふうに捉えることにしています。すなわち、建物の中の空、土地、光を守ろうとしているのです。




そのためには何をしたらよいのかということを考えた時、おのずと一つの結論に達しました。人にとって美しい人生とは、町と運命を共にすることなのです。人が最初に外の世界と出会う場所は小道です。我々は小道の様相を、その町の歴史や依頼主の生活様式、そこに住む人々に合わせてデザインしようとします。このような考えに基づいた建物に住む人だけが「これこそが美しい人生だ」と自信を持って言えるのです。



我々は中庭のある建物を造ります。中庭によって、京都の人、町、道のあり方が見直されるのです。中庭に入る時、人はお寺の境内に入るような感覚を経験すると思います。境内とは、お寺の庭なのでしょうか? それともお寺へ入る入り口なのでしょうか。そこは日常の世界でしょうか、それとも非日常でしょうか。それをはっきりさせようとしても無理でしょう。幻想世界は現実の否定なのか、それともその一部なのか、といった問いと同じといえるかもしれません。我々は狭い敷地に垂直に伸びる共同住宅を建築し、その内部に空洞を作ることで、上記のような問いを超えた建物を作り上げたのです。新しい貌を持った建築が誕生しました。



この中庭は単なる空洞ではなく、象徴的な意味を持つものです。それは以下の点を考えると明らかになります。


1 中庭の構造

2 中庭の外観

3 桜の木の下の小道

4 中庭の必要性



中庭の構造


この中庭の意義を要約すると、明と暗の逆転であると言えます。すなわち、隠れた場所である中庭の方が、表通りより明るいのです。


隠れた暗い場所=明

町と建築、大通りと小道、部屋の内と外、それらの中に明と暗が存在します。


内部の暗い場所=明

ここでは建物全体の「内(中庭)」が、住んでいる人にとっては「外」になります。

この共同住宅には、個々の部屋という、閉ざされ他と隔絶された「内」とは、異なる意味を持つもうひとつの「内(中庭)」が存在するのです。


「内」と「外」の分断と調和=明

この明るさには空、土、光が混在しています。




中庭の外観


建物の中央には、高さ15メートル、7x 5.5の円柱状の中庭を作りました。大通りから奥まった場所に空洞を作ることで、空、地面、光が一体化します。


11枚の湾曲したスリット(細い窓)が、4つのコンクリートの壁に巻きつくように取り付けられています。上に伸びるらせん状のカーブは夢のカーブになり、住む人に部屋と青空と星が結びついているというもう一つの夢を与えてくれます。細い窓によって視界が遮られることで、部屋の中の神秘的な静けさを包むように守ってくれます。


奥の2部屋はL字型で、中庭を囲んでいます。住む人は中庭の存在を身近に感じながら時を過ごします。


高い壁は、太陽が一番低くなる冬至の日光の角度に合わせて、斜めに切りこまれています。真冬でも部屋には日の光が溢れ、空が遮られているという感覚は全くありません。





桜の木の下の小道


中庭に入るためには、外壁に彫られた桜の木の下を通ります。この木は薄い墨色をした「墨染桜」と呼ばれます。墨染はこの町の名前でもあります。1200年も前からの言い伝えに、死者への哀悼歌を歌う時、この種の桜の木は薄い墨色の花を咲かせるというものがあります。


桜の木の下の小道は別世界への道です。トンネルをくぐると、中庭がぱっと開けます。外壁は桜の小道への門のようなものです。


桜の木の下の小道は裏通りへも通じ、その道はさらに別の道へとつながっています。京都の都市は、このような土地構造を今でも保っているのです。スリットコートに住む人は、部屋に入る前に必ず一度は中庭を目にすることになります。







中庭の必要性


京都では、大通りに面した小道は間口が狭く、奥まで続いています。従って日当たりのよい部屋を見つけることは容易ではありません。しかし、中庭を設ければそこに入る日光によって、狭い土地でも日当たりのよい部屋のある建築が可能になります。


敷地を広くするために狭い土地をたくさん買収して、床面積の広い建物を建てたり、新たに区画を拡張したり、歩道や広場を建設することが、必ずしも優れた建築につながるわけではありません。


拡張指向とは対照的に、この建築は狭い通りに面して建てられています。建物は突如として現れ、隔離され隠れた場所を提供します。


あまり目立たない隠れた場所は、静かな空間になります。このような場所では、人の気持ちは陽気になります。我々は建物の中心にそのような場所を作ったのです。




所在地:京都市伏見区墨染町

延べ床面積:992.94平方メートル

敷地面積:440.12平方メートル

規模:5階建

2009年完成




投稿者/ジャスミン・ガンカー

翻訳者/ハートフル・ジャパン 鳴海 亨



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