今回、「“ART”のある暮らし」をテーマにした同社のプロジェクトには、8大学、21名の学生が参加した。このチームが目指したのは、アーティスティックな空間やインテリアのインスタレーションといったアートではなく、思考の奥にある本能や潜在意識の探求だった。デザインを学ぶ学生たちに、デザイン要素である「情緒的なコト」「感性・感覚的なモノ」とは何かを考え、学び、検証し実践してもらいたいと考えテーマを制定した。
ワークショップで取り組んだのは、自分の“感動”を理解すること。1回目のワークショップでは、感動した思い出や心に残っている言葉、忘れられない著作や瞼の裏側に映像化されているシーンなど、それぞれの学生が感動した体験を思い起こしピックアップしていった。すると、それらの経験は「視覚」「聴覚」「触覚」「嗅覚」の五感に分類された。そこで、より具体的な展示テーマである「FIVESENCIES」を設定。五感の同じ感覚に感動した学生を集め、学校も居住地もバラバラな5つのチームを組成した。その上で、共有した感動体験をどのように空間創りに反映できるか検討し、具体的なアウトプットとして五感をテーマにしたインスタレーション形式の作品作りを進めていく。
このディレクションを担当した山本豊津氏は、全体を振り返り、最終のプレゼンテーションが最も印象的だったと言う。「ワークショップでは感動を表現するために『主張の脈絡と言葉を大切にすること』を重要視したが、正直、未整備な状態のまま設営作業に突入していた。プレゼンテーションは5チームがそれぞれ資料を作成し実行することを直前に決定。時間的に多少の不安はあるなかで本番を迎えた。案ずるより生むがやすし。脈絡がしっかりと整理され、言葉を大切に使ったプレゼンが実行された。各チームとも内容も充分に咀嚼されており画像の見せ方なども工夫され、時間配分まで見事だった。学生たちの習得力の速さ、潜在能力の豊かさ、高いコミュニケーション力を実感した」。
“ART”のある暮らしという一見難解なテーマを、それぞれの体験を通じて理解し合うことで、チーム内に一体感が生まれた。感動というデザインにおける重要な要素でつながったチームワークは、彼らの展示に、高いデザイン品質をもたらしている。
写真上:ブース全景。「5SENCIES新しい動きをするキャラクター。」ブース外観。五つの感性がつまっている。
写真下:「触覚」を表現した椅子を発表。実際に触れると視覚からの情報と触覚の認識の矛盾が体感できる。