「時を越えていくものを作りたい」と思いデザインされた高級花がモチーフの照明
まずは好きなもの、気に入ったものを作り、国内外の展示会で発表、商品化という仕事スタイルを取っている高田浩樹氏。主に椅子と照明を製作しており、現在ではトムディクソンをはじめ、イタリアメーカー4社(照明で3社、椅子で1社)と契約する売れっ子デザイナーだ。
「時を越えていくものを作りたい」と話す同氏が2008年の100% design Tokyo出展した作品は、ロマンティックさと繊細さ、そして実用性が共存する一品で、多くの来場者の注目を浴びた。
「この照明のイメージは胡蝶蘭なんです」
名古屋に新しくできたTOYOTAビルを訪れた際、贈り物として受付カウンターに置かれていた胡蝶蘭を見て、ひらめいたのだそうだ。
「新しくできたビルでも、そうじゃなくても、受付のカウンターにはよく胡蝶蘭が置かれていますよね。あれが照明だったらと思って提案したのが今回の作品です」
難しかったポイントは3つ。
胡蝶蘭を完全に再現するのではなく上手にデフォルメして花びらの雰囲気を出すこと、照明器具として光量が十分に得られるかどうか、そしてどうやったら熱を上手に発散させていくことができるかということだったそうだ。
「胡蝶蘭とそっくりに作るのではなく、いかにデフォルメして胡蝶蘭の特徴をモダンに美しく再現できるかの度合いが非常に難しかったです。素材も形も試行錯誤の繰り返しでしたよ。
花びらの素材は熱に強いポリカーボネイトを使用していますが、商品化のときは同じく熱に強いアルミ素材でと考えています。アルミ素材は熱を発散させる作用があるんです。ヒートシンクという熱を逃がす部品が花びらの底の部分にあるのですが、この試作品でもアルミを使用しています。
照明器具のデザインは熱の問題が非常に難しいんですね。下から上へ広がっているこの花びらの形は、熱が発散されていく構造なんです。これをアルミ素材にすることで、効率的に熱を逃すことができるんです」
照明のデザインには科学の知識が大いに必要なのだということが分かる。
もう1つの問題として挙げられた光源にはLEDを使用。LEDは交換がいらないというメリットもあり、エコロジー面でも優れた作品と言える。
胡蝶蘭らしさを強調させている茎の部分にも、花びら同様に気が配られている。採用された素材はステンレスメッシュワイヤー。レーシングカーのブレーキホースに使用される素材だ。
「カーレースがすごく好きなんです。この茎の部分は、角度を自分で変えられるんですよ」
ステンレスメッシュワイヤーは細いながらもカーレースに使われるだけに非常に強度の高い素材だ。空洞になっているため電源コードは中に通されており、見た目のスッキリ感を高めている。